ナラティブとは何か。
そもそもナラティブとは何か。聞いたことすらない方がほとんどだと思うので、言葉の意味から書いていきます。まず、わかりやすいように、私たちになじみ深い物語を意味する言葉「ストーリー」の定義から…。
ストーリーとは、特定のヒト・モノ・何かの経験を語ることを言います。私たちが古くから慣れ親しんでいる『桃太郎』や『竹取物語』も、特定の人物(主人公)である桃太郎やかぐや姫の経験を語るものですよね。それが人や媒体を通じて何十年も何百年も少しずつ形を変えながら語り継がれています。
それに対してナラティブは、言うなれば「個人的な経験を語ること、個人としての物語」です。
簡単な例を挙げてみます。映画を見たとき、人々はそれぞれ何かを感じます。そしてそれを自分の経験として人に語り始める―。これがナラティブの一例です。
そしてナラティブにはストーリーにはないひとつの重要な特徴があります。それは「対話」が生まれるということ。
映画の考察サイトを思い浮かべてください。ストーリーに想像の余白がある作品ほど、考察が飛び交い、顔も知らない観客同士の対話が盛り上がっていますよね。そして、「勝手に世界が広がっていく」―。作者の思いもよらないところにまで波及するエネルギーが、対話によって生まれていく。それがナラティブの強さです。