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『未来は言葉でつくられる 突破する1行の戦略』を読んだ

『未来は言葉でつくられる 突破する1行の戦略』を読んだ
2013年に出版されていたこの本、「いい本でしたよ」と軽く薦められたので読んでみた。
コピーライターのナルシシズムをあおるような、いかにもなタイトルだったのでこれまで避けてきたような記憶があったんですが、よくよく見ると経営学者の楠木建先生が帯を書いているではないか…!なんというタイトルと帯のアンバランス…。

結論から言うと、読んでよかったなと思いました!

1:未来の景色を見せてくれる言葉。

この本はコピーライティングの本ではなくて、どちらかというと起業家の方、新規事業を立ち上げる方に向けられた本だなという印象。
要は、グーグルやアップルといった企業が世界を変えてきたのは、そのビジョンを的確に示した「一行の言葉」、つまり「ビジョナリーワード」を持っていたからだ、という話で、その言葉をつくるステップまで、踏み込んで書かれています。

例えば、かつてコンピューターが巨大な機械だった時代に、PARCのアラン・ケイは「パーソナル・コンピューター」というビジョンを描きました。運用に莫大な予算がかかり、大勢の人員を必要とした頃です。 当時のことはぼくにはわかりませんが、今で言うスパコンみたいな感じが、コンピューターのデフォルトだったのかなと想像します。

よくできたビジョナリーワードは、「未来からの絵ハガキ」に喩えることができます。 その人だけが数十年後へとタイムスリップし、まるでそこから現在へ一枚の写真を送ったかのように、鮮明で魅力的な景色を見せる。そんな言葉になっているのです。

―引用元:『未来は言葉でつくられる 突破する1行の戦略』

アラン・ケイが打ち出した「パーソナル・コンピューター」という概念は、人々に、未来のコンピューターの性能の高さ、価格の低さ、サイズの小ささなど、当時のコンピューターにはありえない景色を見せたことでしょう。

そして、そのビジョンを美しく実現したのがスティーブ・ジョブズだった、とのことですが、その後ビル・ゲイツは、コンピューターの次なるビジョンを打ち立てました。

「すべてのデスクと、すべての家庭にコンピューターを。」

言葉としては回りくどいんですが、新しい景色がはっきり見えるという点ですごいビジョナリーワードだなと思います。ビジョンを実現するためには、価格やサイズだけでなく、使いやすさなど、クリアするべき課題が次々に明確になるのもすごくいい。

言葉には、誰も見たことがない風景を見せる力があります。文学的な言い回しや、ポエムのような繊細さは必要ありません。 たった一枚の絵ハガキが人を旅に誘うように、ビジョナリーワードもまた、人を未来へとかき立てる力が問われるのです。

―引用元:『未来は言葉でつくられる 突破する1行の戦略』

世の企業のビジョンやコーポレートスローガンを研究すると、似たような印象を受けるケースが非常に多いことに気づきます。特に大企業だったり、事業展開の幅が広かったりという場合は、それらを包括する言葉を据えようとすると、どうしてもメッセージがふわふわとしてしまいがちです。

ですから、「アジアナンバーワン」「未来を切り拓く」「お客様に最高の価値を約束する」といった言葉はビジョナリーワードとはなりえません。 ビジョンと呼ばれていたとしても、何ら新しい景色を見せてはくれない。その意味では、「号令」や「かけ声』と名づけた方が正確だと思われます。

―引用元:『未来は言葉でつくられる 突破する1行の戦略』

事業のスコープが絞れていない、あるいは、まだ立ち上げてから間もない企業で、特定の強みを見つけられていない(それを見つけるものぼくらの仕事ですが)場合、この先も長く社員が目指す“旗”となるようなビジョナリーワードを生み出すことは難しいかもしれません。

ただ、ビジョナリーワードこそが企業の目的地をセットする言葉だとすると、それが見つけられていない状態というのは、企業として進むべき道が定まっていない状態と言えるかと思います。そういったクライアントに対しても、ぼくとしては経営戦略・事業戦略を一緒に考えていきたいなと思ったりするわけですが、それは一旦置いとくことにします。

2:機能するビジョナリーワードの条件

さて、著者の細田さんは、機能するビジョナリーワードの条件として次の3つを挙げています。

【1】解像度
【2】目的地までの距離
【3】風景の魅力


一つひとつ見ていきましょう。


【1】解像度


まず解像度は「どれだけくっきりと景色が見えるか」、という指標です。
「新しい」なら、何が新しいのか。「次世代」だとしたら、何が旧世代と違うのか。それを使うシーンはどんな風景なのか。グーグルのように簡単に使えるという意味なのか。言葉はできる限り具体的であるべきです。

書いたコピーが良いかどうかを判断するときに「よく踏み込めてるいいコピーだ」とか「もう一歩踏み込みたい」とか言ったりするんですが、これと同じ話なのかなと思います。

具体的であればあるほど、その企業や商品でしか言えないことを伝えられるようになる。 具体的にすると文字数が増えてしまいがちなので、そこはウンウンとうなりながらあれこれ頭を悩ませるわけですが。


【2】目的地までの距離


現在地と目的地があったとして、目的地までの距離感が「ほどよく設定」できているかどうかは、本当に大事!
ついつい「食の付加価値を生み出し世界平和に貢献する」みたいな目的地を設定してしまう企業がありますが、実現可能性があまりにも低いビジョンには、人はワクワクできませんよね。

個人的には、「できるのか…?できないのか…?いやこの会社ならやり遂げそう…!」ぐらいの距離感が一番よいのではないかと思っております。


【3】風景の魅力


これは、そもそも描いた未来が魅力的じゃないと!という話。難易度高いけど実現してもうれしくない、ということはたくさんあって、例えば「すべての車を手の平サイズにする」みたいなビジョンってむちゃむちゃ難しそう…!でもそれ誰か喜ぶんかいな…!?というところがありますよね。

これら3つの条件、しっかり意識していきたいなと思いました。

3:ビジョナリーワードをつくるステップ

この本では、具体的な4つのステップが紹介されてるんですが、ビジョナリーワードをつくる、という意味においてはSTEP3までが重要かなと思います。

STEP1:現状を疑う「本当にそう?」
STEP2:未来を探る「もしも?」
STEP3:言葉をつくる「つまり?」

(ちなみにSTEP4は、計画をつくる「そのために?」)

これ、つまりはSTEP1で問いを立てて、STEP2で解を発想する。それをSTEP3で人に伝わりやすい言葉にする、ということですよね。
筋がいい問いさえ立てられていれば、正直なところビジョナリーワードはコピーライターでなくても素晴らしいものが書けるなと思ってます。そのテーマについて最も考え抜いているのはまぎれもなく事業者さん自身なので、外の人間として関わらせていただく以上は、到底追いつきようがないと思うんです。

逆に、問いがよくない企業や商品は、どれだけ言葉をこねくりまわしても、本質を失った体に飾りをまとわせるだけで終わってしまう。

もちろん、企業にはさまざまなフェーズがあるので、ブランディングで携わる以上はベストを尽くしていきたいです。ただ、どうせやるなら、事業者さんと問いの発見から一緒になって取り組んでいきたいなーと思ったりもしています。

会社の中にいると見えなくなるもの、というのも確かにあるので、事業者さんにとっての、いい感じの壁になれたらよいのかなと!

4:まとめ

ざっとまとめてしまいましたが、ビジョナリーワードをつくるステップはもっと具体的に書いてあるので、興味ある方はぜひ読んでいただきたいです。
コピーの本(というとちょっと違うかもですが)は小手先のテクがたくさん書いてあるものも多いですが、それらと比べると本質的なことがズドンと書いてある本だったのでよいなと。

なるほど、楠さんが帯書くだけのことはある。 でもやっぱり、タイトルがちょっともったいないな…いい本なので。

塚本 清志
この記事を書いた人 塚本 清志 BRANDING DIRECTOR
大学在学中から、遊べる本屋・ヴィレッジヴァンガードで販促を学び、Webプロダクションのコピーライターとしてキャリアをスタート。その後、コミュニケーション企画・制作会社の創業メンバーに。コーポレート・リクルート・サービス・ECなど、マーケティング戦略...
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