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佐渡島さんの『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』を読んだ

佐渡島さんの『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』を読んだ
『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』などのヒット作を生み出し続けている佐渡島庸平さん。新刊の『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』を読んで、個人的にはかなり視界がクリアになったので、メモも兼ねて学びをまとめておきます。

ざっくり言うと「なぜ今、人は孤独を感じているのか」、「どうすれば孤独を感じないためのコミュニティを育てられるのか」という内容の本でした。が、読み進めるうちに思ったのは、

「あれ、これ会社組織もおんなじなのでは…」

ということ。

日頃ぼくは、いろんな企業のブランディングに携わらせていただいてます。ただ、担う領域としてはまだまだアウターブランディングのほうが比重が高く、これからインナーブランディングについても学んでいかねば、と考えていたタイミングで出会ったのがこの本だったので、最後まで会社組織の活性化という視点で読み進めてしまいました。

1:コミュニティが自走するためのドミノの1枚目とは。

コミュニティを作る上で、再優先事項は何か? それをやり続けさえすれば、コミュニティが自走するドミノの1枚目はどこにあるのか?

―引用元:『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』

前著の『ぼくらの仮設が世界をつくる』の中では、「1枚目のドミノはたった一人の熱狂」と書いていた佐渡島さんも、自身でコルクラボというコミュニティを運営する中で、初めは熱狂していたメンバーが脱落していく様子を見て、考えが変わってきたという。

熱狂とは、太陽みたいなもの。 遠くまでその熱を伝えることができる熱狂は、身近な人を焼き殺してしまう。

―引用元:『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』

企業で言えば、ビジョンがないのは論外としても、逆にビジョンドリブンすぎると、どれだけ社員がコミットしていてもその熱狂に疲弊してしまうことがある。これ、けっこうイメージわきますよね…、ビジョナリーなリーダーであればあるほど、その温度差は埋めきれない谷になる。

よい距離感を保って、そのビジョンに並走できていればいいかもしれないけども、熱狂が求心力となっている限りは、そこに共感し、吸い寄せられる人ほど、巻き込まれやすくなってしまう、というジレンマが確かにあるなと。

2:コミュニティの最優先事項は「安全・安心」。

熱狂というものは、まぎれもなく人のコミットをググッと引き出すし、熱の渦を巻き起こしてコミュニティを活性化する力を持っている。

「燃える集団」という言葉もあるし、そのパワー自体には疑いようがないのだけれども、佐渡島さんが行き着いたコミュニティの最優先事項は、熱狂の対極にあるようにも思える「安全・安心」だった。ぼくにとっては、ここが一番の学びでした。

妻との関係は、僕に非常に大きな自己肯定感をくれた。それによって、僕の心理的安心と安全が確保されたから、僕は挑戦してみようという気持ちになった。

―引用元:『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』

それぞれの人の状況や立場によって、何を安全・安心とするかは違う。 でも、すべての人がその人なりの安全・安心を確保してから、挑戦しているのではないか?そんな風に考えるようになった。

―引用元:『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』

この本で佐渡島さんは、安全・安心をこのように定義しています。

○安全…客観的に身の回りに危険がなく、危険があったときの準備ができている状態 ○安心…イメージがわくこと

(イメージがわくこと!なんて美しい定義!)

会社組織で言えば、こんな感じでしょうか。

○安全…社員が安心して働くためのルール・仕組み・設備・人間関係がある状態 ○安心…会社や同僚のこの先のアクションを知っているまたは予測できる状態

逆に「不安や恐怖が、会社組織を弱くする」とも言えるかもですね。

3:何が「安全・安心」かは、人によって違う。

終身雇用が当たり前だったインターネット以前の日本では、個人が得られる情報も少なく、自分と他者を広く比較することも難しかった。

しかし今は、あらゆる情報が数秒で手に入る時代。社員は、不安や恐怖にさらされていると感じたら、安全・安心を求めていくらでも転職することができる。

だからこそ企業は、給与や待遇だけでなく、コミュニティとしての魅力を高めなければ、もう競争力を獲得・維持できなくなっているのだと思う(知人の会社では辞めた人がみんなメルカリに行くと言っていた…笑)。

たとえば、甲子園を目指そうとしている野球部にとって、野球を遊びでやりたいから練習時間を減らそうと強く主張する人が入ってくると、安全・安心が脅かされる。 一方、野球は遊びでいいと思っている野球部に、甲子園を目指さずに野球をやる意味はないと強く主張する人が入ってくると、その場合も同じく、安全・安心が脅かされる。

―引用元:『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』

ポイントは、人によって、何を安全・安心と考えるかはずいぶん違うということ。 誰が良い、誰が悪いではない。 まずは個人の思い込みを払拭し、コミュニケーションを通じてお互いを知ることが大切なんだと、改めて思いました。

4:ここでようやく、熱狂とは何か。

安全・安心を確保した後に、ようやく熱狂の話に戻ってきます。

熱狂には二つある。テンションが高い状態とモチベーションが高い状態だ。この二つを混同すると、痛い目に遭ってしまう。

―引用元:『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』

この要素分解は本当に参考になる。

佐渡島さんは、「テンションは周りの環境によって左右されるもの」としている。コミュニティを拡大して、すぐに熱狂させると崩壊してしまうのも、テンションを高めてしまうせいだという。

一方、熱狂の核となるべきは「モチベーション」だとしています。

モチベーションは、あがったり、さがったりしない。モチベーションが高いと、困難に直面しても、それを乗り越えようと頑張れる。 モチベーションが高いとき、人は自己肯定感が強い。自分はこのコミュニティにいる価値があると思い、他の人と自分は違う、自分には自分特有の役割があると感じている。

―引用元:『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』

このモチベーションというものは「静かな熱狂」を生む。 佐渡島さんは、「静かな熱狂」こそが、コミュニティに必要な熱狂だと言っています。

ここでふと思ったのは、ぼくたちが普段、ブランディングプロジェクトで企業のビジョンをメッセージ化することは、この「静かな熱狂」の火種をつくる作業なんじゃないかということです。

企業として「何のために生きるか」という思いを「ビジョン」という形で示す。 ビジョンの元に人が集まれば、たとえ個性がバラバラであっても、ビジョン自体がみんなの共通言語になる。 ビジョンという焚き火を、さまざまな人がそれぞれの安全・安心を担保しながら、ゆるやかに囲んでいる。

そんな会社組織がつくれたら超いいな~と思いました。

5:まとめ

コミュニティの活性化はたった一人の熱狂から始まる。

この言葉を聞いたとき、すぐに思い出したのはこの動画でした。めっちゃ好きなんですよ。 かなり話題になったので、知ってる方も多いかなと思います。

この動画を改めて見返してみると、一人の熱狂だけでなく「安全・安心」が確保されていることがよくわかる!

「あ、あいつダンスめっちゃ変www」 「でも楽しそうwww」 「あいついるならダンス下手でもいいよねwwww」

最初の一人のダンスがうまかったら、二人目が飛び込むこともきっとなかったはず。 その後、熱狂の渦が広がり、たちまち大きな集団に育っていくのは、動画を見ての通りかと思います。

話題の箕輪さん編集ということで、この本は発売前から話題になってたけれども、おもしろいのは、本にも書かれている通り、佐渡島さん自身もコミュニティづくりでまだまだ模索を続けているということです。 現時点で佐渡島さんがたどり着いた問いをドンっと置いて行かれたような読後感。この本は答えではなく、始まりの本だなと思いました。

あと、本文中でゆるやかにいろんな本にリンクされてたり、巻末にコミュニティづくりのためのブックリストがあったりしてよいです。読みたい本が一気に増えてしまうのでヤバいですが…。

ファンコミュニティをつくりたい人、会社組織、チーム、サークルなどなど、人と人との関係性を考える人には、超おすすめの一冊です。 ぜひ読んでみてください~

塚本 清志
この記事を書いた人 塚本 清志 BOARD MEMBER / BRANDING DIRECTOR
大学在学中から、遊べる本屋・ヴィレッジヴァンガードで販促を学び、Webプロダクションのコピーライターとしてキャリアをスタート。その後、コミュニケーション企画・制作会社の創業メンバーとして、マーケティング戦略に則ったクリエイティブディレクションに携わ...
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